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音楽の話。from:tokyo, japan

Gilad Hekselman Live

2013.11.07 at Shinjuku PIT INN
MEMBER :
Gilad Hekselman (g)
Joe Martin (b)
Justin Brown (ds)

一年ぶりのGilad Hekselmanの来日公演。



僕は最近のジャズギタリスト(Kurt Rosenwinkel以降として、Mike Moreno, Lage Lund, Julian Lage, Oz Noy, Nir Felder, etc...)を割と好んで聴いているけれど、その中でも一番好きなギタリストを聴かれたらたぶんGilad Hekselmanだと答えると思う。
彼の空間の中での自由なフレーズのメロディセンスが大好きだ。
最近のジャズギタリストの一つの流れとして「フレーズを無機質に歌わせる」というものがある、というのはこないだ読んだ石沢功治『New Yorkジャズ・ギター・スタイルブック』(2013 yamaha music media corporation)に出てきてなるほどなと思った事だが、Gilad Hekselman, Julian Lageあたりの80年代生まれ組はどうやらもはやその流れには乗っていないようにも感じる。(Kurt Rosenwinkel, Mike Moreno, Oz Noy, Lage Lundはいずれも70年代生まれ)

Gilad Hekselmanの話に戻ると、前作『Hearts Wide Open』と同じくJoe Martin(b), Mark Turner(sax), Marcus Gilmore(ds)というメンバーで録音されて今年出た新譜『This Just In』も素晴らしくて、今年のヘビロテ盤となっていただけに今回の来日はとても楽しみだった。
メンバーだけで言えば去年の来日の時にはMark Turnerも含めたアルバムのフルメンバーで来日していたので正直今回の来日は「新譜売れてないのかな?」と心配になってしまった。まぁMark TurnerはFLYの公演中止とかMarcus GilmoreはChick Coreaの新譜ツアーとか色々あるんだろうけど。
でも僕としてはJoe Martinが見れたので満足です。Justin Brownも素晴らしかった。


ライブではこのメンバーで一週間くらい日本を回ってきたというのもあってか全員譜面なし。
ギタリストとドラマーが向き合うように半円に小さくセットを組んでました。
前作も含めればアルバムの曲で90分×2setくらいいける曲数なので全曲オリジナルで行くかとおもいきや、二曲目でいきなりBud Powellの「Parisian Thoroughfare」!。個人的にはかなり意外な選曲で、しかもそれを開放弦もからめてローポジションで弾くという実に彼らしいアレンジ。他の人の曲でもアレンジで完全に自分のものにしてしまうなぁと思った。
この日他に演奏された彼のオリジナル以外の曲は、アルバムにも収録で高校生の時からお気に入りだという「Nothing Personal」、Baden Powellの「Samba de Preludio」、Glenn Millerの「Moonlight Serenade」だったと思う。「Moonlight Serenade」は「友人(たぶん日本人の名前だった)に捧げる」と紹介。

演奏はというと、この日のGilad Hekselmanは絶好調でかなりいい演奏がばんばん出ていてJustin BrownのドラムがそれをアルバムでMarcus Gilmoreが見せたよりも盛大に盛り上げると客席はもうかなりの興奮度だった。
そしてなによりも感じたのは1曲の中でのダイナミクスレンジがものすごく広いトリオだという事。
これに関してはJoe Martinがかなり担ってる部分があったと思う。弾かない時は弾かないし、曲のフレーズやキメも崩したりとにかく型にはまらない自由なベースというのが僕のJoe Martinのイメージで好きな所なんだけど、それがGilad Hekselmanの毛並みとすごくあっていて、それが例えば「Nothing Personal」で決まったベースラインを崩しながらもギターを聴きながら少しずつ音数を増やしたり、或いは減らしたりしてじらしたあと一気にウォーキングしたりそれをまた急に止めたりともう彼が曲をコントロールしているかのようにも感じられた。
そして盛り上げたあとやドラムソロのあとのテーマの入りではそれが繊細だったり最高音量だったりと三人の息がピッタリとあっていてこのトリオでのコンビネーションは素晴らしいものだった。
僕はもう今日の演奏にギタートリオの一つの一つの完成形をみた気すらした。
そしてGilad Hekselmanは前回よりもエフェクターの使用が増えた。ディレイをすごく深くかけたり、弾いた音をしばらく持続させたり(休憩時間に足元を見たけどこれは多分エレハモのFreeze)してもアンサンブルの邪魔はしないですごく綺麗に収まってたし、歪みを使ってバリっと弾いてもかっこよく鳴っていた。これは新作のインタールード的な部分でもたくさん織り込まれていてライブでどうなるのか楽しみだったところの一つ。座っての演奏で手元がよく見えないのもあるんだけど不思議な音とかタッピングがでてくるとお客さんはみんな覗きこんで見ていた。(みんな覗きこんでるから結局良く見えないんだけど。)

1曲1曲がスリリングでかつメンバーのコミュニケーションもすごくあってと見入っている間に、アンコールも含めて全10曲ほどのステージはあっという間に終わってしまいました。

演奏時間以外では始まる前から客席でお客さんと話をしていたり、休憩時間には外の喫煙所そこにいたお客さんにタバコを一本もらったり、お客さんのアンコールの拍手がなる中でカウンターに飲み物を貰いに行ったりとかなり自由なGilad Hekselmanでした。


一ヶ月ぶりの更新でしたが次にブログを書くのはたぶん12/5のOmer Klein Trio(これもPIT INN)でしょう!