恐らくお仕事では書かない2016年の日本の音楽のこと。
我ながら2016年はジャズばっかり聴いていたと思う。
だからたまにはジャズじゃない音楽の話を。ことし聴いていたジャズ以外の日本の音楽について。
普段ジャズとその周辺の音楽を聴いているから気になるのかもしれないけど、日本の音楽を聴いていても、大きなテーマの一つとして「打ち込みと生演奏」があったと思う。そしてそれは同時に、「ライブと音源の差異」をも産んでいる。
たとえばyahyelとかD.A.N.の魅力の一つである硬質な空気感。ひんやりした音源でやっている音響をライブで100%再現するのは不可能に近い。むしろライブと音源で別の側面を見せることを前提に作られている音楽だと思う。そんなわけで僕は、ライブでどれだけ再現するのか、どのように再現するのかって所ばっかり観てしまう。
カラオケをバックに歌っていたでんぱ組.incやBABYMETALが、ちょっと前から生演奏のバンドをバックに歌っていることも、そんなことを考える一つにきっかけだった。だってアイドルにとって最大の売り物は、音楽よりも彼女たち自身なのに。あえて差を出す、その差を一つの武器にしている。いわゆる「体験の時代」っぽいなと。
自分と同世代くらいの日本の音楽を観ていると、なんだかとっても黒い音楽が増えた。もうSuchmosとか言わなくてもいいと思うんだけど、現行のブラックミュージックをルーツにする音楽がすごく増えたと思う。このラインでよく聴いていたのはWONK、向井太一、showmoreとか。あとyahyelもこのラインかな。僕の中でJames BlakeやFKA Twigsは音響面ばかりに注目がいって内容を消化しきれていない感があったんだけど、だんだんそこも消化されてきた感じ。WONKとyahyelは、テクスチャーは違うけど内容的にすごく似通ってると思う。
しかし少なくとも僕が高校生の頃に、クラスでラップを聴いてる人ってそんなにいなかったと思うんだけど、一体彼らはどこから来たんだろう。
僕が中高生の頃に熱狂したASIAN KUNG-FU GENERATIONや、the band apartや、MONOEYES(という細美武士)は、再構築に向かっていた。『ソルファ』の再録、アコースティック編成での新録、パワーポップへの帰還などなど。Hi-STANDARDとか175Rの再結成もあったり、POLYSICSも再録盤のリリースが発表されたり。この辺は結局世代なので聴いてしまう。再録盤というものを前向きに捉えるべきなのか、未だに判断がつかずにいる。
「ある時代の」という話でいくと、最近僕は「ポストロック」の限界が来ていると思った。恐らく2000年代から、ある種積極的に貼られていったこのラベルに収まりきらない(というか元から割とぼんやりした範疇だったけど)、というかここに押し込める事で、内容について真摯に語る事を放棄していたようにも思う。「なんとなく変拍子で、リバーブが掛かっていて、ディストーションじゃなくてファズ=ポストロック」みたいな。
最近それを感じたのは元宇宙コンビニのギタリストによるJYOCHO。考えるきっかけは昨年の『ポストロック・ディスク・ガイド』。「なんとなく」の中身が、どこから来たかという事までしっかり解説した内容は素晴らしかったです。でもこの本自体が、ポストロックが終わったからこそ出た本だとは思う。
JYOCHOはアイリッシュっぽいと思いました。LUNASAとか。 もとから影響源って言われてるTTNGも含めて、アメリカというよりはイギリスなんだな。
CRCK/LCKS、TAMTAM、ZA FEEDO、ASA-CHANG&巡礼はよく聴いた。森は生きているのアナログも良かったな。これらは影響源が透けて見えない音楽って感じがした。
あと今年良いと思った音楽の中には、例年になく録音物としての良さと繋がっている部分が大きかったように思う。LUCKY TAPESとかbonobosとかはまさに。
でも結局ギターロックっていいよな~とリーガルリリーを聴いて思うのでした。
プレイリストは記事に出てきたのも出てきてないのもごった煮。