Chris Lightcap's Bigmouth / Epicenter
member:
Chris Lightcap: bass, acoustic guitar, organ
Craig Taborn: Wurlitzer, electric piano, piano, organ
Tony Malaby: tenor saxophone
Chris Cheek: tenor saxophone
Gerald Cleaver: drums, percussion
Recorded: December 16-17, 2013, at Brooklyn Recording, NY
Engineer: Andrew Taub (Clean Feed CF315CD)
NY、ブルックリンを中心に活動するベーシストChris Lightcapの新譜。前作と同じく固定メンバーによるBigmouth名義で2010年に出た『Deluxe』以来のリーダーアルバムで、Tony Malaby、Chris Cheekというテナー二管にCraig Taborn、Gerald Cleaverという間違いない感じのメンバーです。
一曲目からペンタトニック的なフレーズが絡み合ってこのバンドの「バンド」らしさみたいなものがうかがえる。この「バンド」らしさとアドリブ・即興のバランスで言えばこのバンドはすごく上手くいっていて、それっていうのはGerald CleacerやChris Cheek、Tony Malabyというどっちかって言うと「ガチ即興」みたいなシーンでも活躍するプレイヤーの貢献によるところが大きいと思った。Craig Tabornが参加するChris PotterのUndergroundはもうちょっとジャムバンドっぽい感じだけどこっちは割りとそういう空気がある。
そしてここでのCraig Tabornのエレピはちょっとローファイな音で弾きまくったり、ストリングスっぽい音で空気感を出したりとまさに色を付けるペインター的なポジションを担っている。もう一つペインター的な役割を果たしているのが曲によってギターも弾くLightcapで(ベースと同時になっている所はライブでどうなっているんだろうか)意外と繊細なアルペジオやコードワークをみせていて驚き。
三曲目のタイトルトラック「Epicenter」はもろOrnette Coleman的なちょっとおかしいブルース的なテーマであったり、と思ったらいわゆるモダン・コンテンポラリー的な曲があったり、8ビートでサックスが轟音みたいな曲もあったりとメンバーと情報からの想像よりもずっと色んなレパートリーが楽しめた。
最後の曲なんかはベルベット・アンダーグラウンドの有名なバナナの「あれ」に入っているルー・リードの曲だ。
このCreen Feed RecordsはKris Davis、Ches Smith、Eric Revisなんかのメジャーっぽいシーンと行き来するプレイヤーがリーダー作を発表する一方で、Chicago Undergroundのロブ・マズレクによるChicago/São Paulo Underground Feat. Pharoah Sandersなんて組み合わせがアルバムを出したり、Peter Brotzmannが出していたりと、レーベルが出すレコードの数のわりに内容はバラエティに富んでいてかなり面白いレーベルだと思う。
そして面白いのがこのレーベルはポルトガルのリスボンのレーベルなんだよね。ドイツに本拠地を置くACT Musicといい、アメリカから離れたヨーロッパのほうがこの辺りのバランス感覚には優れているのかも知れない。
それと僕としてはこういうレーベルのおかげもあってか最近こういうちょっと「ガチ即興」みたいなものが入ってるジャズが盛り上がっている気がするんだよね。同じくヨーロッパのHubroなんかもちょっと違うけどそういう枠組みの音楽が多いように思う。もちろんミュージシャン同士の人脈的にもGerald CleaverやTyshawn Soreyが使われたり、Thomas Morganが使われたりと。
これってもしかして色んな音楽と混ざり始めたメインストリームのジャズへのカウンター的な動きなのかな?とかも考えたり考えなかったり。