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音楽の話。from:tokyo, japan

”ニューチャプター以降”について書くために読んでおきたい参考文献

あなたの聴き方を変えるジャズ史

 

 「ジャズライターになるには何読めばいいですか?」ってきかれるのですが、王道については山ほど入門本があるのでまずは適当に買って読めばいいと思います。王道は押さえた上で、”ニューチャプター以降”な人達について書く時に読んでおきたい本をまとめました。実際インタビューにいくと「今ハマってるのは、バルトークバド・パウエルとSon Luxかな」とか「カエターノ・ヴェローゾがさぁ」みたいな人が多いので、こういう脇道の話がわかってないと厳しい場面が多いです。『Jazz The New Chapter』だけでは押さえられないところはこのへんで補っておきましょう。もちろん読むより聴くほうが大切です。

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最近インディーレーベルについて考えてる。の、まとめ

 

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「で、今日のレーベル(の在り方)について簡単に言うと、Suchmosの成功に代表されるように、インディーで自分たちの好きなようにやって、商業的なプライズやフェイムも得てしまう、というのがクールでスマートとされている。別にdisるわけじゃないけど、〈長いものには巻かれろ〉でメジャーから作品を出すことの価値が揺らいでいると思うんですよ。上がっているか下がっているかではなくて、揺らいでいる。というのは、これまではインディーである程度行ったその先にメジャーがあって。インディーがよしんばメジャーを追い越したところで、それは事故的なことであって、一般的なことではないとされてきた。それが今では、(インディー主導でも)一般性を持つ見通しが出てきている。まあ、Suchmosは極端な例ですけど」

 

「僕らTABOOはソニー傘下なので、どう振る舞うべきかを常に考えていて。メジャー・カンパニーのなかにインディー・レーベルとして、ビュロー菊地がTABOOを持って、プロモーションから何まで自由にやったほうが上手くいくんじゃないか。そんな見通しも、一般論として成り立ちそうな時代になっているわけですよ。そんななか、古いのか新しいのかよくわからないけど(笑)、レーベルのアーティストをショーケース形式で、非常に安価なプライスで提供していこうと。会場の代官山UNITは、僕が(メインアクトで)イヴェントを開けばすぐ満杯になるくらいのキャパですが、そうではなくて、僕のことを知らないような人たちに、若くて優秀な方たちを紹介したい。そのためにも、ライヴ・イヴェントをシリーズ化するのが手っ取り早いんじゃないかと考えたわけです」

 


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カクバリズムはこの十数年で日本のインディーシーンの中でも有数のレーベルになったと思うのですが、どんなことを大事にしながら運営をしてきたのでしょうか?

角張:「リスナーをメインストリームからこっちに持ってこないと」という気持ちはずっとありますね。そういうことも含め、実際星野源くんでいろいろな経験をさせてもらったし、何とか混ぜ込ませたいという意識は常にあります。もともとは「売れる売れないではなく、いい作品を出していく」というところからスタートしてるんですけど、どうやったらちゃんとスポットライトを当てられるかは常に考えていますね。

―なるほど。

角張:たとえば、メインストリームが山手線だとすると、そこからどうやって人を、井の頭線なり他の路線にうまく乗せ換えるかを考えながら十何年やってきて、比較的乗り換えてくれるようになったような気もするし、もしくは僕が駒場東大前くらいまで寄ってるのかもしれないなとも思いますね。実際、今カクバリズムの事務所が下北沢から神泉まで来ちゃってますけど(笑)。わかりにくいですね(笑)。

 

―若いバンドのメジャーに対する意識もここ10年で変わったように思うのですが、その変化をどのように見ていらっしゃいますか?

角張:僕の肌感ですけど、カクバリズムを始めた2002年くらいの頃は、「アンチメジャー」という人がいっぱいいたような気がするんですよね。で、だんだん景気が悪くなった2008年くらいになると、「もうメジャー行かなくていいっしょ」という意識に寄っていって、みんながDIYでツアーを組み立てて、売上を立てる事例がたくさんあって。でもその後は結構へばってきているような気もして。震災以降のここ4年くらいは、なんだかんだメジャーに行く人が増えてる気がします。

―確かに、そうかもしれないですね。

角張:インディペンデントでやり続けることをかっこいいと思う人が減ってるんじゃないかな? とか思ったりもするんですよね。インディペンデントで成功する事例より、『Mステ』に出たりする方がいいってなってしまっている。それはそれで全然いいと思うし、簡単に出演できるものじゃないから。ただ、こだわってるもののよさが少し隠れてしまって、評価する人たちが減っちゃったんじゃないかなとも思うんですよね。

 

柴崎:OGREは逆にメジャーからインディーに来たわけですが、まず第一に彼らの創作性をいい形で高めるための環境作りについて相談を重ねる中で、P-VINEと一緒にやってくれることになったんです。メジャーからインディーズにいくというと、昔は「メジャー落ち」みたいな言葉があったじゃないですか? でも、そういう認識は全然ないですね。

 

北澤SoundCloudとかYouTubeで、音源を直接ユーザーに届ける機会がここ数年で格段に増えていて、うちのバンドは特にそのタイミングで出てきているので、ネットからの発信力は感じていますね。デモの音源をSoundCloudにあげたりすると、すぐ反応があったりする。僕らの時代からすると、遠回りしなくてもユーザーに直で届けられるというのは、プロモーションとしてすごく有効に活かせる便利な時代だなって思いますね。 

 


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ミト:メジャーに行ってもインディーの頃より儲けられないけど、メジャーに行かないと表立ったプロモーションはできない。でも変な話、それをやり切るところまでやったら、また戻ればいいんです。それはマイナーチェンジじゃなくて、究極のアップデートですよ。

田口:音楽業界の中でレーベルの意味って正直薄くなってきてるじゃないですか? 本の出版社にしても、だんだん体力がなくなってきていて、同じ流れになるのかなって思うんです。でも、作ったものを人に届ける手段は圧倒的に増えてきていて。

ミト:そう! そこなんだよ。メジャーとの関わり方以前の問題で、クリエイターの活動する場所は数限りなく増えてきていて、むしろ可能性やチャンスはいっぱいある。つまり、作品を作るのはレーベルじゃない、クリエイターなんだってところに戻ってきてるだけの話で。そんな状況の中で、いかに面白いことをやろうかという話の出発点として、僕らは手売りから始めてみる。それもトライ&エラーの一環でしかないし、今後またメジャーと関わったときに、お互いが後ろめたくなるようなことにはしたくないから、別に私たちが総取りしたいわけではない。ただ、一回リスタートする状況がそろそろ来ると思っていて、それは個人的にはワクワクすることだったりするんです。

 

 


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ミト:「今の若い子はエンタメを全部タダだと思ってる」って話がありますけど、私はそれは逆だと思ってて、「よくこんなのがタダで見れるよな」って、絶対に思ってると思うんですよ。好きなアーティストには頑張ってほしいし、つながりたい。そのためには音源を買ったりすることが一番簡単な意思表示だということは、きっとわかってる。

ただ、今の若い子はネットによって仮想敵が見えすぎちゃってると思うんですよね。CDを買ったところでそのお金がアーティスト以外にもいくことや、Spotifyにお金を払っても、何億回再生されないと一般企業の社員並みの給料にもならないことを知っちゃってる。だから、「じゃあ、どうしたらいいの?」ってなっているわけです。

―なるほど。

ミト:でも、そのわだかまりを解消し得るのがクラウドファンディングですよね。もちろん、クラウドファンディングも運営費をCAMPFIREにお支払いするんですけど、とはいえほぼほぼ直接アーティストに還元される。そこでアーティストとファンがお互い報われ始めているんじゃないかなって。

 


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家入:みんなが表現者になってしまったら、趣味は多様化して、好みのアーティストはバラバラになる。たとえば「日本中みんなが応援するアーティスト」みたいな人は出づらくなりましたよね。そんなふうに、音楽に関するいろんなことが、かつての形では成り立たないような時代になっていくなかで、「一番割を食うのは誰なんだ?」って考えると、やはりアーティストにしわ寄せが来るんだろうなって思うんです。

儲かる人はさらに儲かって、儲からない人はずっとそのまま、という二極化が起こるなかで、僕らは常に後者の側でありたいと思う。だって、小さな経済圏はたくさん生まれますからね。これからのアーティスト、地方でくすぶってる人、生まれながらの家庭環境で学ぶ機会がない人たち。僕らは常にそっち側でありたいっていうのが根底にあるんですよね。

 

―アーティストの自主的なあり方を後押しするような枠組みを作る?

岡田:そうです。メジャーデビューしてもバイトしてるアーティストがいっぱいいるなかで、それを変えていけたらなというのは、いつも思ってることで。それに、アーティスト自身が自分のやってることに対してより責任を持ったり、もうちょっと考えることが必要なんじゃないかなって。

活動が上手くいかないことをスタッフの責任にしちゃうアーティストも結構多いと思うんですけど、「スタッフがちゃんとやってくれない」って愚痴ったところで、なにも始まらない。レコード会社やマネジメントのレールに乗っかって、「アーティストは曲を作るだけ」というのもひとつのやり方だけど、そこで上手くいかなかったときに不満が出てしまうのであれば、自分でチームを作ろうよって。そういう提案をしたいんです。

 

―「CAMPFIRE MUSIC」はクラウドファンディングをどのように使っていくのですか?

岡田:「CAMPFIRE MUSIC」でご一緒するアーティストに、毎回クラウドファンディングを使ってもらう、ということではないです。マネタイズとしてクラウドファンディングは当然選択肢のひとつだけど、僕らはそれを強要するつもりはない。

先ほども言った「アーティストへの融資」というのは、CAMPFIREのサービスとして新しく始めた「CAMPFIREレンディング」(クラウドファンディングで資金調達に成功したプロジェクト実行者を対象とした融資)というサービスの延長線とも言えると思います。そうやって、お金の新しい流れを作りたいんですよね。「契約がこうだから、いくらまでしか制作費や宣伝費を出せない」じゃなくて、「じゃあ、どの手段を使ってやりたいことを実現させようか」っていう話が、僕らはできると思うんです。

 


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──自主レーベル設立の理由について教えてください。

結局、同じことを繰り返したくないなって。どこかにまた所属して、また2年後離れてとかって繰り返しを、もうこのキャリアでしたくないなっていうのがありましたね。なので、誰と一緒にやるのか、誰だったらやってくれるのか、人選は結構慎重にやりました。重苦しい感じではなく、どうせやるなら、自分が信頼してる人たちと一緒に面白いことをやろうよっていう感じです。最終的な目標で言ったら、昔アンディ・ウォーホルがやってたファクトリーみたいな、ああいう場所を作れたらいいなっていうのがありますね。

──単なるレーベルというだけではなく、「クリエイティブチーム」という位置づけのようですね。

もちろん、音楽ありきではあるんですけど、洋服のこともちゃんとやりたかったし、マーチャンダイジングも自分たちでデザインして、将来的には、アート以外にもいいバンドがいたら、フックアップしていきたいと思います。まあ、まだ設立して一年ちょっとなので、そこはこれからなんですけどね。いろんな企業の方とも話をしたんですけど、やっぱり起業して1〜2年目はほぼ投資なんです。逆に言うと、この1〜2年目をちゃんとすれば、3年目は上向きになっていくんじゃないのかなって。まあ、果たしてこれってアーティストがしゃべるべきことなのかとか、そういう模索もあるんですけど、やるって言った以上はやっていこうと思います。

 


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横山:今は「そもそもレコード会社なんてのは隙間産業じゃないか」って思うようになった。たとえばミュージシャンに音楽を制作する力があって、それをアルバムにする力、自分たちに流通させる力があれば、レコード会社っていらなくなるよね。音楽関係の仕事はそれだけじゃなくて、流通とか音楽出版とか雑誌とか、ほんといろいろあるけども。お客さんがニーズとして「これはいらない」って判断するんだったら、もうそれは淘汰されてしかるべきなんじゃないかな。これがポジティヴなのかネガティヴなのかわかんないけど、もう甘んじて受け入れてる。俺ひとりが考えても世の中の流れには抗えないぞ、と。

横山:そう。でもその代わり、バンドを長く続けるための方策を一緒に考えることはできる。だからレコード会社っていうよりも、そのサポートをする仕事になってきてるかな、最近は。この先も職業ミュージシャンってどんどん減ってくと思う。そしたらみんなアルバイトしながら音楽をやっていかなきゃいけないし、さすがに自分ひとりじゃ手が回んないことも多くなるわけで。レコード会社はそのお助け会社なんだって自覚しなきゃならないんじゃないのかな、特にインディーズは。